今回紹介する本
・少年と犬 (著者)馳星周
第163回直木賞受賞作で、東日本大震災で飼い主を亡くした犬とそれに関わる人との関わりが
描かれた作品です。
ご紹介:
シェパードと和犬の雑種の多聞(行く先々で異なる名前で呼ばれるが)は、東日本大震災で
飼い主を亡くすが、多くの人と出会い・別れを繰り返し、それが7つの短編集のように
なっています。
出会う人たちは多聞が選ぶのか運命の出会いなのか、何か悩みや人生の終着点を探している
ような人ばかりで、まるで多聞はその人たちを目指すべきところに導いてあげる役を担って
いて役目が終われば去っていく、といった「仕事人」ぶりを発揮しながら旅を続けます。
多聞の目的(目標)は何なのか?
感想:
自分も犬を飼っていますが、長く共に暮らしていると何を言っているのかがある程度理解
できているように感じますが、多聞はそれ以上に(その当時の)飼い主が「どうすべきか」
まで考えて訴えかけてくるところが実によく描かれています。
それは決して当人の望んでいた結果では無いかもしれませんが、悩みや後ろめたさなんかを
結果的に一番良い方法で解決してくれる選択肢に導いたのかなと思えてきます。
ただ、結果はどうあれ多聞と出会った人間はこれまでに色々な問題を抱えながらも多聞に
心を開くことで自分自身を見つめ直しながら、導かれた運命に身を委ねていっていくような
気がしました。
そして本のタイトルでもある最終章「少年と犬」では、多聞の目指していたものが何だった
のか、そして最後に成し遂げた出来事に涙が止まりませんでした。。。